【司法書士が解説】遺産分割協議書における預貯金の書き方とは? | 【公式】小田原相続遺言相談室(運営:守屋司法書士事務所)

【司法書士が解説】遺産分割協議書における預貯金の書き方とは?

相続手続きにおいて、遺産分割協議書は非常に重要な書類です。特に、預貯金は多くの相続財産の中でも流動性が高く、分割しやすい財産であるため、遺産分割協議書での正確な記載が不可欠となります。本記事では、司法書士の視点から、遺産分割協議書における預貯金の書き方について詳しく解説していきます。

遺産分割協議書における預貯金の重要性

遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を示す重要な法的文書です。特に預貯金は以下の理由から、協議書での正確な記載が極めて重要となります:

  • 流動性が高く、分割が比較的容易
  • 相続人間でトラブルが起きやすい財産の一つ
  • 金融機関での手続きに必須の情報となる
  • 将来的な相続税申告の基礎資料となる
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預貯金の相続に関する基本知識

預貯金の相続に関して、以下の基本的な知識を押さえておくことが重要です:

  1. 預貯金は相続開始時(被相続人の死亡時)の残高が遺産となります。
  2. 共同相続の場合、原則として相続人全員の共有財産となります。
  3. 遺言がない場合、遺産分割協議で分割方法を決定する必要があります。
  4. 相続人の法定相続分に従って自動的に分割されるわけではありません。
  5. 金融機関によっては、預貯金の払い戻しに独自の取り決めがある場合があります。
  6.  

遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書の作成には細心の注意が必要です。特に預貯金に関しては、具体的かつ明確な記載が求められます。

 

基本事項の記入方法

協議書には以下の基本事項を必ず記載します:

  1. 被相続人の情報
    • 氏名(フルネーム)
    • 死亡年月日
    • 最後の住所
  2. 相続人全員の情報
    • 氏名(フルネーム)
    • 被相続人との続柄
    • 現住所
  3. 相続財産の内容
    • 不動産、預貯金、有価証券など、全ての相続財産を記載
  4. 各相続人の取得分
    • 誰がどの財産を取得するか、具体的に記載
  5. 作成日
    • 遺産分割協議書を作成した日付
  6. 相続人全員の署名・押印
    • 実印の使用が望ましい
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預貯金に関する具体的な記入例

預貯金については、以下のように具体的かつ詳細に記載することが重要です:

預貯金
1. ○○銀行△△支店 普通預金 口座番号××××××× 
   残高 5,000,000円(令和○年○月○日現在)
   取得者:長男 山田太郎

2. □□信用金庫▽▽支店 定期預金 口座番号●●●●●●●
   残高 3,000,000円(令和○年○月○日現在)
   取得者:長女 山田花子

3. ◇◇郵便局 普通貯金 口座番号△△△△△△△
   残高 2,000,000円(令和○年○月○日現在)
   取得者:次男 山田次郎

このように、以下の情報を明確に記載することが重要です:

  • 金融機関名
  • 支店名
  • 預金種別(普通、定期など)
  • 口座番号
  • 残高(および残高確認日)
  • 取得者の氏名
  •  

預貯金の分け方と方法

預貯金の分割方法には様々なアプローチがあります。状況に応じて最適な方法を選択することが重要です。

 

預金残高の確認と記載

遺産分割協議書に記載する預金残高は、相続開始時(被相続人の死亡時)のものを使用します。以下の手順で確認します:

  1. 金融機関に残高証明書を請求する
  2. 請求の際は、相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)が必要
  3. 取得した残高証明書の金額を協議書に記載する

注意点:相続開始後に発生した利息や、自動引き落とし等による残高の変動には注意が必要です。

 

代償分割と現金分割の選択肢

預貯金の分割方法には主に以下の2つがあります:

1. 現金分割

預金を引き出して現金で分ける方法です。

  • メリット:分割が明確で、相続人全員が即座に資金を得られる
  • デメリット:大金を扱うリスクがある

2. 代償分割

一人が預金を取得し、他の相続人に現金や他の財産で代償する方法です。

  • メリット:預金口座をそのまま引き継げる、他の財産との調整が可能
  • デメリット:代償の算定が複雑になる可能性がある

状況に応じて、相続人間で話し合い、適切な方法を選択することが重要です。

 

預金引き出し手続きの流れ

預金の引き出し手続きは、以下の流れで行います:

  1. 遺産分割協議書の作成
  2. 金融機関への必要書類の提出
    • 遺産分割協議書(原本)
    • 被相続人の戸籍謄本(除籍謄本)
    • 相続人の戸籍謄本
    • 相続人の印鑑証明書
    • 被相続人の死亡診断書(写し)
  3. 金融機関での本人確認
  4. 預金の払い戻し手続き

金融機関によって必要書類や手続きが異なる場合があるため、事前に確認することをおすすめします。

 

預貯金の証明書類について

預貯金の相続手続きには、複数の証明書類が必要となります。これらの書類を適切に準備することで、スムーズな手続きが可能となります。

 

必要な書類の一覧

預貯金の相続手続きに必要な主な書類は以下の通りです:

  1. 遺産分割協議書(原本)
  2. 被相続人の戸籍謄本(除籍謄本)
    • 出生から死亡までの経緯を確認するために必要
  3. 相続人全員の戸籍謄本
    • 相続人であることを証明するために必要
  4. 相続人の印鑑証明書
    • 遺産分割協議書に押印した印鑑と同一のもの
  5. 被相続人の死亡診断書(写し)
  6. 預金通帳(カード)
  7. 相続人の本人確認書類(運転免許証など)

注意点:金融機関によっては、追加の書類を求められる場合があります。例えば、法定相続情報一覧図や相続人代表者の届出書などが必要になることもあります。

 

専門家に依頼するメリット

相続手続き、特に遺産分割協議書の作成は複雑で専門的な知識が必要とされます。司法書士などの専門家に依頼することで、多くのメリットが得られます。

 

司法書士の役割と専門知識

司法書士は相続手続きの専門家として、以下のようなサポートを提供できます:

  1. 遺産分割協議書の適切な作成
    • 法的に有効な文書の作成
    • 記載漏れや誤りの防止
  2. 法的な観点からのアドバイス
    • 相続法に基づいた適切な助言
    • 将来的なトラブル防止のための提案
  3. 金融機関との円滑な手続き
    • 必要書類の確実な準備
    • 金融機関とのスムーズな交渉
  4. 相続人間の調整
    • 公平な遺産分割の提案
    • 相続人間の意見の調整

専門家に依頼することで、複雑な相続手続きをスムーズに進められ、将来的なトラブルを防ぐことができます。特に、以下のような場合は専門家への相談をおすすめします:

  • 相続財産が複雑で多岐にわたる場合
  • 相続人間で意見の相違がある場合
  • 相続税の申告が必要な場合
  • 被相続人に債務がある場合
  • 相続放棄や限定承認を検討している場合
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まとめ

遺産分割協議書における預貯金の書き方は、相続手続きの重要な一部です。正確かつ詳細な記載が求められるため、以下の点に注意が必要です:

  • 預貯金の詳細(金融機関名、口座番号、残高など)を明確に記載する
  • 相続開始時の残高を正確に確認し記載する
  • 分割方法(現金分割or代償分割)を慎重に選択する
  • 必要な証明書類を適切に準備する

相続手続きは複雑で専門的な知識が必要とされるため、不安な点がある場合は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家のサポートを受けることで、スムーズな相続手続きと、将来的なトラブルの防止につながります。